JunAle |Interview| 刺し子アーティストが語る“クリエイティブ”とは?

JunAle |Interview| 刺し子アーティストが語る“クリエイティブ”とは?

2024/6/7

JunAle |Interview| 刺し子アーティストが語る
“クリエイティブ”とは?

日本古来から伝わる「襤褸」をモチーフにスニーカーやマウンテンジャケットといった現代のプロダクトに「刺し子」を施し独自の発想でアートとして表現してきたJunAle。

JunAleこと杉前 潤氏はデザイナーとしての一面も持ち、様々な角度からものづくりの造詣を深めてきた彼だからこそ生まれるアイデアと技術で“古”と“新”を織り交ぜた作品を多数発表している。

伝統的な手法としての文化的な側面、装飾としての自由な色使いでのアート性、布の再利用という環境的な配慮の観点から海外での評価も高く注目を浴びている。

今回、裁断後に余った革の切れ端を「襤褸」にみたてて継ぎ接ぎし、JunAleが実際に「刺し子」を施すスペシャルエディションモデル(注1)に加え、彼がデザインを注入しSPINGLEのクラフトマンシップが融合した2モデルのレザーシューズが登場。

彼の様々なバックボーンを紐解きながら、クリエイティブに対しての“思い”に迫ってみた。

注1:JunAleが実際に「刺し子」を施すモデルについては当公式オンラインショップ限定での受注生産となります。詳細は商品ページをご確認くださいませ。

──JunAleこと杉前 潤さんのこれまでを教えてください。

JunAle:服飾専門学校在学中にテーラリングを学び、卒業後ロンドンへ渡りました。そこでブランドのアシスタント、オペラ衣装制作などファッションの経験を積んでいました。

──刺し子アーティストとしての活動はいつからですか。

JunAle:その後、帰国した2006年から制作をはじめました。当時並行してスポーツファッションのデザインをおこなっていたこともあり、スニーカーやマウンテンパーカーなど中心に現代的なプロダクトに針と糸だけで補修や装飾をする「刺し子」としての活動をはじめました。

──「JunAle」最初に特徴的な名前だなと思いました。

JunAle:ロンドン留学時代に所属したサッカーチームで、当時メンバーにジュンがつく名前の人がいっぱいいたんですね。ジュンが多すぎるという理由でチームのレジェンドにアレックスというあだ名をつけられました。
帰国した後もそのつながりの友達からはアレと呼ばれていたのでSNSのアカウントをJunAleとしたのがはじまりです。

──「襤褸」「刺し子」をはじめたきっかけについて教えてください。

JunAle:もともとズボンの裾上げや破れた穴の補修などを手縫いで直していて、日本の補修や刺繍に興味を持ち、いろいろ情報を収集しているなか襤褸に出会いました。
襤褸に施されている手縫いが刺し子だと知り、実物をどうしても見たくて、当時浅草のアミューズミュージアムで襤褸の展示を常設していたので観に行きました。自分が何気なくやっていた繕いは昔から脈々と生活の中で続いてきた手仕事の一部だと感動したのがきっかけです。

──ご自身がされていたことの本質に気付き、心が動かされたのですね。

JunAle:そうですね。だだ、実際は想像を絶する手仕事のパワーに圧倒されて…!当時の貧しい環境でしか成し得ないものだと痛感しました。
現代のものが余っている環境の中でどういった意味があるのかを考えさせられました。それが一つの制作のモチベーションとなっています。それ以降、自身でも襤褸の収集を始め、刺し方や布の継ぎ方など独学で研究しながら制作を開始しました。

──研究、実践していく中で今の独自性のある表現方法になっていったのですね。

JunAle:当時の襤褸や刺し子は当時の生活があってこそのものだと思います。なので100%再現ではなく、あくまで思想的な部分は引き継ぎつつ、現代的に落とし込んだ表現にチャレンジしたいと考えています。当時存在しなかった素材や布の組み合わせ方やストレッチ素材などにトライしています。

──物作りで大切にしていることや、取り組むうえでの重要なマインドはありますか。

JunAle:ものを作っていると常に選択に迫られます。その時に”先に進む””次に繋げる”そんなイメージをもって判断して作品を作っています。

──様々な経験をされてきて振りかえると「美」とは。

JunAle:時間の経過が感じられながらも存在し続けるものでしょうか。道具や物ということであれば使用の動きや、使う人の癖で現れる傷や痕跡は美しいと感じます。

──どういう作品が素晴らしいと感じるのか、その基準などありますか。

JunAle:継続から生まれる力と一瞬のアイデアのような異なる要素の融合は素晴らしいと感じます。また、自分自身も体現していきたいですね。

──最後に。コラボレーションをさせていただきましたSPINGLEの印象、今回のプロダクトに対しての思いなど教えてください。

JunAle:こだわりや独自性のあるブランド、技術に興味があります。また、そういうもの同士が協業し、新しい要素を生み出すことに意味があると思っています。SPINGLEのバルカナイズ製法やレザーに対する姿勢に共鳴したことで一緒にプロダクトをしたいと思いました。労力のかかるハンドメイドにこだわり続けている部分は、お互いに手作業だから生み出せることへの価値の共通理解もありますよね。ものづくりの精神として譲れない頑固な部分とか。

今回完成したシューズを見て、刺し子の特徴を活かしながらも現代的な1足に仕上がったのではないかと思います。

襤褸は刺し子で繋ぎ合わせ、使う人へとバトンを繋いでいきます。それを履いて外に出て、見てくれた人がかっこいいなとか、なにか響いて共感してくれて、”心”の部分でも人から人へと更に繋がっていけるような一足になってくれたら嬉しいですね。

JunAle × SPINGLE collaboration movie

■JunAle

1983年生まれ
スポーツウェアデザイナーの傍ら、襤褸から現代的な解釈として発展させ、フリースタイル刺し子アーティストとして活動を開始。
古来からの伝統手法、手仕事である刺し子のステッチワークをモダンに昇華し、唯一無二のアートを生み出す。
スニーカーを中心に、一針ずつ丁寧に繊細に縫い込まれた独特の佇まいがある作品、プロダクトをこれまで数多く発表している。
色褪せたスニーカー、ウェアに古布やハイテク素材を掛け合わせ、多彩な糸が力強くも繊細に両者を繋ぎ、また新たな息を吹き返していく。

公式HP:https://www.junale.life/
Instagram:https://www.instagram.com/junale/

■Photo & Movie by Yuto Kida:https://www.instagram.com/yuto_kida/